デンマーク旅行記 5

インガーの暮らし

インガーの家に泊めてもらい、手仕事を教えてもらった6泊7日、リッタが通訳をしてくれました。でも言葉にならないことはいっぱい有ります。

インガーの紡ぎをしたいという私の希望に、彼女は実際やって見せてくれて、後は『自分でやってごらんなさい』と自分の事を始めます。途中で『どう?』と見にも来ません。心行くまで、自分で試す、やってみるといい、ということなのでしょう。 夢中になって梳毛糸紡ぎをしてみても、どうしてもうまく出来ない、『彼女はどうやっていたんだろう?』と思ったときには、身振り手振りを加えて、もう一度やって見せて欲しいと頼みます。快く見せてくれました。その間、じっと知りたいと思ったことに意識して集中して観察します。しばらくして『もういい?』と彼女。 OKと言うと、後はまた自分のことへ、そして私はまた一人で彼女の手つきを真似してトライの連続。 言葉で言ってしまうとこれだけですが、この環境がすばらしく心地いいんです。私がやりたいようにするのを彼女が楽しんでいるのが、空気で伝わってきます。この、デンマークの片田舎マメン(Mammen)の古い一軒家に滞在した6泊7日、それまで見聞きしたデンマークの教育、文化が実践されている事を体験しました。『あなたはあなたそのままがいい。それが私達もうれしい』そんなメッセージがインガーの生き方、そのもののような気がします。

紡ぎで毛を上手に送り出せないとき、次の毛の継ぎ足しがうまく出来ない時、双糸にする時に2本が均等にならない時、大きなカードを持って、慣れない大きさにうまく出来ない時、そんな、何かインガーのように出来ないな、と感じた時、思い浮かべる彼女のやり方は、羊毛をやさしく扱う姿でした。彼女が羊毛を慈しむような同じ思いを心がけると、何となく作業がスムーズになってきました。不思議ですね。

いつもしたいことを一杯持っているインガー、家事、料理も楽しみますが、それはとても合理的、生活もシンプルです。それまで会ったデンマーク人は、食事の後すぐ食器を洗い、布巾で拭き、磨いて台所をきれいに片付けます。一人暮らしが長いこともあってかインガーは、私達がいても、食器洗いは貯めて1日1回、もしくは次の朝、それも洗ったらラックに置いて乾かします。リッタが我が家でする様に後片付けを申し出たら、インガーは大喜びでした。手仕事する時間が欲しければ、自然にこうなりますね。とても親近感を持たせてくれる一コマでした。
毎日食べる黒パンを天然酵母を使って焼きます。ずっしり、重たい、栄養が詰まったパンです。薄く切ってチーズやレバーペーストなどとよく合います。

子供の頃に始めた編み物に夢中になり、それはインガーの大変だった時代も、彼女を支えてきました。3男3女6人を育て40代になって、紡ぎの本を見ていた頃、偶然道を尋ねてきた紡ぎ車を製作する人との出会いから手紡ぎを始め、誰に習うことなく、本から覚えた事を続けてきました。50代で夫を病気で亡くし、長い日々を一人で暮らす彼女の心を家族、友人とつなげ、支え、豊かにしてきたのは、手仕事と、庭仕事、手作りの暮らし。6人の子供達の中から、ノルウェーで暮らす3女が同じように手仕事の楽しみを受け継いだそうです。

すばらしい庭の花たちもご紹介しましょう。

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