梳毛糸と紡毛糸
梳毛糸の糸約300gを紡ぎ終わった後、先日工房で講師を迎えてスピニングの講習会をした折に習った英国の紡毛糸紡ぎを、させてもらいました。同じ毛で違う紡ぎ方をした場合、風合いにどれほど違いが出てくるのかにとても興味がありました。今回の原毛は、長さ、太さ、毛質がかなり混ざっていたために、同じ状態のローラグが出来なかったこともあって、紡毛糸紡ぎが成功する時も、沢山毛を食いこみ、とめて引っ張る時も、少しずつ毛を送り出して調整する時も・・・と試行錯誤の繰り返しでしたが、梳毛糸紡ぎと同じように双糸にして洗ってみたら、その差は歴然。 どちらも中途半端な技術のもの、もっと良い状態の紡ぎをして、比べてみたいというのが次の目標です。
25年くらい前に初めて訪ねた時には、カードをかけてローラグを作って紡いでいたので、このローラグをどのように紡ぐのかを見せてもらいました。結論、梳毛糸紡ぎと同じ。 撚りをかける前に手元の毛を広げてきれいに並べてから送り出していました。手紡ぎの教本を見せてもらいましたが、写真はリネンを紡ぐ写真がまず一番初めに出てきます。ボビンのそばに突き出た棒にリネンを紐で結び付けて底から引っ張り出し紡いでいます。インガーの紡ぎ車の写真を取りたいと言ったら、これが完全な形だといつもははずしていたこの棒をセットしてくれました。
こんなやり取りから、私は彼女の中に紡毛糸、梳毛糸の区別、こだわりが無い、それは北欧の傾向ではないかと気が付きました。麻が採れ、その手紡ぎから発展して行ったから、かもしれません。やがて麻が羊毛に代わり、でもテクニックはそのまま梳毛糸紡ぎに・・・ 隋分前に買った英国出版の織物の本の糸の所にはまず紡毛糸のこと、その特徴と扱い方などが書いてあります。英国は始めから服地を織る織物が発達して、紡毛糸で織り、縮絨して丈夫な服地にする文化が発展した結果の様に思います。
スコットランドのキースと言う所にある、タータン博物館で見た、紀元325年の一番古いタータンと言われるものは、こげ茶と白の綾織りのチェックでした。それに対し、デンマークの国立博物館の、昔の衣類の展示で見たのはこげ茶の無地でした。スコットランドに昔々どこかに、色を交互に入れてチェックを作る発想を得た人が一人!居たのかもしれません。北欧は、麻の延長で梳毛糸を紡ぎ手編みにして身につけることが発展した??? 私が知りえた少しの情報をかき集めると、こんな洞察が成り立つと思います。気候風土はスコットランドとデンマークは似ている様に思いますが、国の規模、人口、歴史、物の考え方、需要 など、夫々が微妙に関わりあって違うものに発展したように思いました。 現地で見てきたとはいえ、その量は少ないし、意図を持って旅行したわけではありませんから、もっともっと経験豊富は方が沢山いらっしゃるでしょう。でもスコットランドと北欧の織りや糸を比べた人は居ないかもしれない、とあえて裏づけの乏しい洞察でありながら、発信してみたいと思います。ご意見お待ちしています。
先日のスピニングパーティーでホームスパンの清野先生が私のブースに来てくださった折、私の紡いだ糸をお見せして私の体験をお話ししました。そこでとても有意義な事をお教えくださいました。 長年毛糸にこだわり続けて、英国一辺倒だった私の世界がデンマークへ広がり、『服地を織るということ意外は梳毛糸紡毛糸、こだわらなくてもいいと思うよ。ニットは自分が好きなら、どんな糸でもいいんじゃない?』という言葉に、もっと広がった様に思います。