織り

布の仕上げ方の違い

縮絨するのは紡毛糸で織られた布であると書きました
では、紡毛糸で織られた布と梳毛糸で織られた布は
どんな違いがあるのでしょう


タータンの布で比較してみましょう
  * 紡毛糸の布は柔らかく、膨らみがあります
  * 梳毛糸の布は、滑らかで、張りがあります
紡毛糸で縮絨された布と言えば、代表されるのはウール毛布でしょうか
毛布は縮絨された後起毛加工されて、あの厚い布になっています
この頃は化繊の毛布が多いと思いますが、それはちょっと違いますね
梳毛糸の布で、誰でも知っているのは、学生服や紳士物のスーツに使われる
薄手で滑らか、光沢がある、擦り切れ難い布でしょう


以下、スコットランドで見学させて貰った布の仕上げ工場 (日本語では織物整理)で見聞きした事です
実際には、工場で織られた布はお湯と洗剤で洗います
紡毛糸で織られた布は、洗いの時間を長くすると縮絨が進みます
更に縮絨させる場合には、追加のもみ洗いのような工程があるそうです


梳毛糸で織られた布もお湯と洗剤で洗いますが
当然、風合いが大きく変わることはありません
工場には梳毛糸の布は、熱い、冷たい、熱い、冷たい、、、を繰り返して
布をセットする機械もありました


スパーフィニッシュという
布を厚めのクラフト紙を間に挟んで屏風畳みにして
分厚い鉄の塊に熱を加え、高温高圧のプレスをかけ
畳み直して更にもう一度プレスというのがあります
これで、薄くピカピカの梳毛糸の布になります
ウールは高温で処理するとその形状を維持する性格があるそうです


専門的には、もっと色々なことがあると思いますが
基本的なことは、布になる過程が違うということは理解していただけたでしょうか
こんな事を頭において、自分が織った布を見てみてください
どんな糸を使うかで布の風合いが決まってしまいます
次は糸に焦点を当ててみましょう

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経糸をつなげて織っています

手織り教室をお休みにしているので誰も工房へ来ませんが
私はこの時とばかり、チェックのサンプルをたくさん織っています

平織りのチェック
1回に織るのは、経糸の本数が同じチェックデザイン5つ
今回はこの色   

サンプルなので経糸は1枚分80cm、同じ色の本数を計算して、まとめて整経します
それを、1回に5パターン経糸をつなげて織り機にかけます
織り機には綿糸が通してあり、それにデザイン通りに機結びします

こうすると、毎回綜絖通しや筬通しをせず、無駄にする糸も少なくて済みます
思った効果にならずに、他の色を試したり、織り直すデザインもあります
久しぶりにチェックにハマっています


先日ネットなどを使ったミニ講習のことを書きましたが
色々な状況から、枠にはめて提供することが難しいようです
個別に対応しますので、質問などありましたら、メールでお問い合わせ下さい
家にこもって手仕事を楽しみたい方の手助けができれば嬉しいです

日に日に厳しくなるコロナウィルス感染は、まだ長くかかるでしょう
どうやって自分を見失わずに過ごすか
小さな何かが、ちょっと助けてくれたりしますね
そう思って、まだ寒い英国の友人達へ春の花の写真を送りました

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縮絨とは?

タータンの記事の校正を頼まれた時に
「タータンは縮絨しないんですか?」と聞かれたことがあります

縮絨はしないけど、洗いはします!
それほど、「縮絨=洗い」が定着しています
でも、縮絨は洗う事ではありません

これに関した話を整理して少しずつ書きたいと思います

縮 絨 字の意味を考えてみましょう
は文字通り、縮むこと
は主に厚地の毛織物を指すと辞書にあります

では、どんな布でも織った後に洗うことで、縮んで地厚になる?
答えは No!
洗っても風合いが変わらなかったことがあるでしょう

44年前、英国へ語学留学中に参加した手織り講習で織った物です

先生に言われるまま、織った一部を熱い少量のお湯と石けんぶくぶくで洗うこと20分
出て来たのが、毛布のようにフェルト化した布でした
(画像では見えにくいですが、実物は風合いの違いが良くわかります)
使った糸が手編み用じゃないけど、何が違う?
そこから、私の糸へのこだわりが始まりました

英語の本には、仕上げのところに
score(洗い)とmilling(縮める)と別々な工程として書いてあります
*score 糸に付いた汚れや糸油を落とすための洗い
*milling 更に縮めて厚みがある布にするための工程が縮絨

score と wash は同じく洗うことを意味しますが、
scoreの方が汚れをゴシゴシ擦って洗うような時に使う言葉だそうです。

そして一番大事な「縮絨する布」は紡毛糸であること!

羊毛を紡いで織るホースパンは紡毛糸に近い糸を使っているので
仕上げで、石鹸液をかけて踏んだり、ローリングしたり、洗濯機で回して縮絨します
でも、日本の紡績糸は圧倒的に梳毛糸が多いですね
手編み用の糸はほとんどが、梳毛糸です

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自宅で織っている生徒さん

タリフの教室の男性の生徒さん
時々机上講習を受けられて、ご自宅で織っています
出来上がった時には、間違いが無いか点検も兼ねて
工房に来られて見せて下さいます

今回は前にも織った事がある網代柄
本数を変えたり、苦労された後で
ちゃんと柄が出たと写真を送って下さいました
ヤクの2/16の糸です  洗うとフワフワになるでしょう〜
下の写真は1枚目、機から下ろしてテンションが緩むと柄がよりはっきりと見えます。 
2色を綾織りなら2本ずつ、平織りなら1本ずつの組み合わせです

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ウールと絹の組み合わせ

7、8年前から楽しんでいるのが、タリフの糸と絹糸を使った織りです
タリフの糸は揉んで洗うと、どんどん縮みます
そこへ洗っても縮まない絹糸を使って市松に織って
思い切り洗うと、絹の部分がシボに、、、

1月の展示会に出したのがきっかけで、
織ってみたいという生徒さんが増えました

写真は、単発講習で来られていたMKさんの洗う前(左)と洗った後(右)



使う絹糸も色々なので、その時々に密度など調整しますが
一番難しいのは、経糸の巻き取り
整経台から外した途端、縮むウールとふわふわに広がる絹糸を
だましだまし巻き取ります

左、私の生糸を使った物、
右、MMさんの絹紡糸を使って、洗濯機で洗ったとか、、、
見事なシボですね

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手編み用毛糸で織る 4

平織りに続いて、綾織りです
平織りより、密度を少し上げないと同じような風合いにはなりません
理由は、経糸、緯糸共に2本単位(2本上、2本下)で織られているからです
平織りは1本ずつ、(1本上、1本下)
1本おきに緯糸が上に行ったり下に行ったりするので、スペース要りますね
平織りに比べて、厚みが出て柔らかい風合いになります

この糸、この密度で綾織りを織るのは結構難しかったです



前にも書いた様に、経糸を開いたまま緯糸を打ち込んでも逃げていってしまいます
隙間がたくさんあるので、いくらでも緯糸が入ってしまいますが
これは実験なので経糸の密度に合わせました

これは、縦方向、横方向共に糸が戻る隙間があるからか
若干横長になったくらいでした

今回試した、3/cmと4/cm 平織りと綾織りの中で
元の玉に巻かれた手編み用毛糸の風合いに一番近かったのは
3/cmの綾織りでした
編み地も編んでみたので、工房に来られたら、触って比べてみることができます

この糸は、洗っても変わらりませんから、マフラーにするなら
織りやすさも考えると、平織りは3/cm 綾織りは4/cmの密度が良いようです

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手編み用毛糸で織る 3

もうちょっと、手編み用毛糸で織った結果報告です
平織り
経糸が引っ張れて細くなっていますが
それを無視して、織り機の上で経糸の密度と同じ密度に打ち込んでみました


4/cmの密度では、機から外しても糸が膨らむ隙間があまりないので
縦方向に少し縮み、四角が若干横長な感じになりました(左側下辺り)
そのあと、経糸が縮むことを考えて、縦長になる様にしたら
機から外して経糸が元に戻り、四角が正方形になりました

3/cmの密度は、織り機の上で経糸がかなり空いています
それと同じように緯糸を入れて、やはり横長になりました

この糸、織ったものを使う時の柔らかさを考えると3/cmですが
織る時にかなり気をつけないと打ち込みが入ってしまいます

面白いのは、打ち込みがきついと幅の縮みが多いことでした
緯糸を同じ様に入れているのに、どうしてでしょう?
多分、織る時に引っ張られている経糸が曲がる
(緯糸に合わせて縦方向に波打てない)ことが出来ず
その分緯糸がピンと張った経糸で横方向に曲がる(波打つ)ので
長さを取られて、幅が縮むのではないでしょうか
これは編み物用毛糸に限ったことではありません
糸は嘘をつかないので、心地よい布織ってあげたいものです

今日は季節外れの雪でした
清瀬はこんな感じ、、、せっかくきれいに咲いた桜はどうなったでしょう

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手編み用毛糸で織る 2

手編み用毛糸で織って解ったことがいくつかありました
使った毛糸は、メルノウールの柔らかい並太の毛糸でした


手編み用毛糸は引っ張るととても伸びるし細くなります
その糸をどんな密度で織るか、、、が難しい
今回試したのは4/cm と3/cm
織っている時にきれいに見えるのは多分4/cm
織った物を使う時の風合い重視なら3/cm
写真は筬に通してテンションをかけていない状態です


もちろん、平織りと綾織では適した密度が違います
それぞれに、緯糸の打ち込む密度や、織り機から外した時の様子が違って
これをきれいに織るのはとても難しいというのが、感想です

織っている時、経糸は伸ばされて細くなっているところへ
緯糸は伸ばさず太いまま、、、
織り機から外すと当然経糸は元に戻ろうと縮んで
結果的には緯糸の密度が下がる、、、
でも、緯糸が隙間無く打ち込まれていると、縮む事ができない、、、

もう一つ解ったのは、他の教室で習った方々が
打ち込む時に、何気なく次の綜絖の開きにしているのを不思議に思っていましたが
この手編み用毛糸もツルツルで、経糸を開いたまま打ち込むと
筬を離すと緯糸が逃げていってしまいます
打ち込むと緯糸が細くなって、いくらでも打ち込める感じです
なので、私は、緯糸を入れて布端を整えたら両手でそ〜っと定位置まで打ち込み
そこで次の開きにペダルを踏み変えて筬を離しました

手編み用毛糸で織って満足できなかった方々
ぜひタリフの糸で織って、洗ってみて下さい
先日も、織り経験がある方が講習に来られ、この糸の扱いやすさ、
洗った結果の良さに驚かれていました

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手編み用毛糸で織る 1

手編み用毛糸でサンプルを織ってみました タリフの糸は市販されている手編み用の毛糸とは違うので
織り上がりの風合いが違います

手編み用の毛糸は、手編みにして風合いが良くなるように作られています
ほとんどが梳毛糸で、編み地が柔らかく伸縮性があります
糸は伸縮性があるので
経糸を作ったり巻き取りの時に均一にするのが難しいです
苦労された方もあるでしょう


伸縮性があるということは、引っ張ると細くなり
テンションを緩めると縮んで太くなります
左下の写真は、テンションがかかって細くなった経糸とふんわり入った緯糸

右下の写真の様に糸の長さが揃わなくても
最初に同じ長さに作ってあるはずなので、先を揃えて引っ張って大丈夫

太い糸だし、100本の小さなサンプルだからすぐ終わる…と思いましたが
手編み用の毛糸で織るのは、難しかったです
でも、わかったことも色々あり、これから役に立つでしょう

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新しい仲間入り

久しぶりの投稿になってしまいました この間、コロナウィルス感染の状況は日々変化して
あっという間に世界中の一大事になっています

タリフの教室は人数が少ないので、講習も続けていました
新しく体験講習に来られる方も続いて
それぞれに合わせて説明する私の頭はフル回転です!

そして、昨日中古の織り機が1台仲間入りしました
お母さまが愛用されていた織り機を譲り受けました
少し手を加えてタリフ仕様にします〜

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